前科者(漫画) 6巻あらすじ感想をご紹介します。
加害者と被害者の苦悩
みどりの想い人
前科者(漫画) 6巻あらすじ
保護司の阿川佳代は、新聞配達のバイトとコンビニを掛け持ちして生計を立てている。
保護司は犯罪を犯した「前科者」の更生と社会復帰を手助けするための仕事である。
しかし、報酬は一切ない。いわばボランティアのようなものだ。
加害者
佳代は被害者担当保護司の梶木に誘われ、強制わいせつで起訴された佐田山の裁判を見学する。
佳代は傍聴席に座る一部の男性陣に不快感を表し、性犯罪は男社会の中で裁かれていると梶木は言う。
佐田山の担当保護司は、佳代の祖父に師事していた久米という男だった。
久米は、佐田山の痴漢行為は「依存」であり、難しいケースだと腕を組む。
佐田山はカウンセリングを受けるが、自分で制御できないもの「依存症」という病気に対し、どうしていいか分からない。
たとえ30年間我慢しても何かのきっかけで出ることはあり、依存症は治ることはない。
妻からは冷たくされ、仕事も見つからず苦悩する佐田山。
しかし、ふと置かれた結婚写真が目に入り、妻に対しても被害者の女子高生に対しても悪いことをしたと感じる。
カウンセリングの帰り、満員電車に乗った佐田山は目の前の女子学生を見て手が動きそうになる。
だが、持っていた結婚写真を見ることで衝動をやり過ごすことができたのだった。
佐田山は保護司の久米を訪ねる。
雑談中に「一生薬を飲まないといけない。一生というとなんかつらいけど」と久米が話しているのを聞く。
その帰り、偶然被害者の女子高生に会った佐田山は、頭を下げて心から謝罪する。
被害者
強制わいせつの被害者だといううわさが、女子高生の通う学校に広がっていた。
勝手な憶測で話す生徒もおり、学校という小さなコミュニティに属している女子高生は逃げる術もない。
被害者担当保護司の梶木は、加害者がカウンセリングに行き努力していることを女子高生に伝える。
女子高生は「(加害者が)努力しているから、私も安心するように努力しないとダメなんですか?」と電車に乗れなくなった怒りをぶつける。
梶木は佳代に協力を依頼する。
佳代にも痴漢に会った経験があり、女子高生の力になりたいと考える。
佳代は女子高生に接触するが、そう簡単に心は開いてもらえない。
根気強く女子高生に「いつでも相談してください、明日でも、10年後でも」と話しかける佳代。
「10年後でも私は苦しんでいるんですか?否定してくださいよ」
痴漢に会った日から続く苦しみを訴える女子高生。
「良いことも悪いことも毎日毎日があなたを作っている。毎日を大切に生きているあなたは負けてもいい」
と語る佳代。
「なにそれ」とつぶやきその場を去ったが、帰りに加害者の男に会い謝罪を受ける。
「二度としないでください!一生涯ずっと!」
女子高生は今まで言えなかったことを、加害者に直接言うことができたのだった。
かすみのTシャツ
かすみ(5巻参照)は、保護司について佳代に取材する。
保護司のTシャツを作るのだと言う。
かすみと保護司について問答のような会話をする佳代。
数日後、かすみは「保護司とは何かを考えた結果」できたデザインのTシャツを佳代に渡す。
佳代がTシャツを広げると、自分の顔が大きくプリントされていた。
みどりの想い人
みどりの保護観察が終了した。
これからは佳代とみどりはただの友達としての付き合いになる。
みどりは、佳代が幸せそうにのろけ話をする様子を見て、哀しく思う。
佳代が担当保護司になり、自分たちは本音で付き合った。
みどりの言動で佳代が、佳代の言動でみどりが変わっていく。
佳代を好きになることは必然だったのだと、みどりは思っている。
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前科者 (6)前科者(漫画) 6巻 感想
今回の話も難しいです。
加害者の依存は治らないし、被害者の心の傷も言えるとは限らない。
でも生きていく以上、一生付き合っていくしかない苦しみがよく描かれています。
前科者はあっと驚くような衝撃的なことは少ないですけど、毎日じわじわ浸透していく焦りや苦悩をよく描き出しています。
普段の何気ない会話が作中にうまく散りばめられており、本筋と関係があったりなかったり…
読み手としては結論の出ない会話にやきもきすることもありますが、それが現実ってことかなと思います。
急に?といいますか、今までの言動を見ていたら分からなくもないですが、みどりの想い人が判明しました。
これから一波乱ありそうな予感もありますが、みどりは佳代の幸せを願うんだろうなとも思います。
個人的には、多実子や女子高生のような影のある女性が登場人物の中でも特に好きなんですよね。
何か分からないけど魅力的な人物像だと思います。美人だし。
かすみは荒唐無稽でよく分からないです。
行動力と想像力がある女の子で、好奇心旺盛。だけど何かやらかしそうな危うさも持ち合わせています。
4巻あたりから、登場人物が増えて群像劇に近い様相を呈してきました。
みどりや多実子、かすみ、田口など、同時進行で物語が進んでいくので、あらすじを端折っている部分もあります。
この漫画は複雑な構成になっているなと改めて思います。
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前科者 (6)