前科者(漫画)3巻あらすじ感想をご紹介します。
前科者(漫画) 3巻あらすじ
保護司の阿川佳代は、新聞配達のバイトとコンビニを掛け持ちして生計を立てている。
保護司は犯罪を犯した「前科者」の更生と社会復帰を手助けするための仕事である。
しかし、報酬は一切ない。いわばボランティアのようなものだ。
佳代は今日も銭湯のチケットと牛丼を用意して、前科者を待つ。
父のコーヒー
飲食店で出会った男に割引券をもらった佳代は、お礼にコーヒーをおごる。
臼井と言うその男は少年刑務所上がりで、「早く仕事をみつけないと」としか言わない保護司に不信感を抱いていた。
「保護司なんていらない」という臼井に「あなたもクソ野郎ですか?」と問う佳代。
保護司という仕事に揺れている時、そんなことを言われたら保護司をやりたくなくなるからそんなことを言わないで欲しい、と自分の気持ちを正直に話す。
保護司はなり手が少なく自分のようなものでもなれてしまう。
保護司という立場で少しでも人を救いたい。大事なのは今だから。
自己満足なのは分かってるし、自己満足なんて言ったらダメなのに…
「私がクソ野郎だ!」保護司という立場でありながら、自己嫌悪に陥る佳代。
臼井は、コーヒーをおごってもらうのが好きな事、それは父親がコーヒーを飲ませてくれた思い出があるからだと佳代に話す。
そして「保護司が必要かは分からないけど、前科者にはあんたが必要だ」と語る。
臼井が父親にコーヒーをもらったのはたった1度だけ。
彼の背中には無数の切り傷とやけどの跡がある。
すべて父親によってつけられた虐待の傷だった。
佳代は後日、臼井の担当保護司と会うが、立派なことを言ってはいるものの口から出まかせに過ぎず、保護司も辞めていることに失望する。
距離を知らない女
薬物の使用で執行猶予になった多実子を担当することになった佳代。
多実子は幼少のころからDⅤ・虐待による被害も受けている。
多実子はおどおどしており、自転車の乗り方も銭湯の入り方も分からず漢字も読めない。
佳代は多実子に、薬物依存は病気だから「助けて」と言っていいと優しく接する。
しかしみどりは、そういうやつは優しくすると距離感が分からないからヤバいと佳代に警告する。
多実子はフードコートで働き始めたが、男にいちゃもんをつけられたあげく、仕事中にセックスしてしまう。
理由もなく殴られ虐げられてきた多実子は、相手との距離感がつかめず、優しい言葉にすがってしまう。
それ故に今まで数知れずの男に騙されてきたのであった。
佳代は仕事をさぼってセックスしていた事を知り、多実子の職場に再び現れた男に注意し、退散させる。
「自分がバカだから」「みんなに迷惑をかける」と繰り返す多実子にイライラした佳代は、「やめてください」と怒鳴ってしまい、あわてて「ごめんなさい」と謝る。
しかし多実子は他人に謝られた事がないため「嬉しい」と感じる。
多実子は佳代の新聞配達を手伝い、佳代は多実子に自転車の乗り方を教える。
多実子は、佳代がみどりとファミレスで談笑している姿を見かける。
「私の佳代さんをとるな」
嫉妬する多実子は、苦しみのあまりクスリを買う金欲しさに男とホテルへ入る。
佳代に自助グループを紹介してもらうなど、少しづつ経験を積み始める多実子。
多実子は「いいことが続くと怖い」と話すが、佳代は「怖いと思うのは私も同じ。でも今日は昨日の未来だから」
クスリに手を出さずに今日を生き抜くということは、未来に向かって頑張るということ。
しかし多実子の人生はまだまだ続く。更生への道のりは長いと考える佳代だった。
佳代からお皿をもらった多実子は、ホテルで男からもらった3万を彼女に渡す。
このお皿がきっかけで、骨董市でお皿を買うことが趣味になる多実子だった。
万引きをする老女
万引きで3度逮捕された80歳の老女・よしの担当になった佳代。
お金のことに執着しているよしの言動に、佳代は昔不倫をしていて後ろ盾がなく節約するために万引きしたのだと予想する。
そのことを尋ねると、みるみる形相が変わるよし。
そこにみどりがやってきて、面接はお開きとなる。
よしはいつも死んだあの人を思い浮かべる。
こんな時、あの人ならどう言うだろうと。
たまにしか会えなくてもあの頃が良かった。
今はもう会うこともできない。
みどりはよしに「ただ生きている」んじゃなく「更に生きないと」ダメだと言う。
しかしよしは、もう「生きたくない」と答え、みどりは「じゃあ死ね」と吐き捨てる。
この事をみどりから聞いた佳代は、よしを訪ね「更によく生きろ」と言われたらどうしますかと尋ねる。
よしは「笑っちゃう」と答えるが、「誰に言われたら笑わないですか」とさらに佳代に聞かれ、あの人を思い浮かべる。
記憶の中のあの人は、きっと「きちんと生きろ」と言うだろう。
しかしよしは、「きちんと死ね」と言われるだろうと答え、胸を押さえて倒れる。
倒れても、あの人は迎えに来てはくれなかった。
お金は関係なく、ヨシを助けてくれる人がいるからだ。
ヨシを誘って、佳代とみどりは愛子(1巻参照)の店で豪華な食事を楽しむ。
ヨシは出された刺身を見て、辛かった日々や刺身を万引きしたことを思い出し、(窃盗を)「もうしません」と反省する。
佳代はよしやみどり、多実子の4人で骨董市へ出かけ、束の間を楽しむ。
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前科者 (3)前科者(漫画) 3巻 感想
この作品はあらすじも感想を書くのも本当に難しいです(笑)
哲学的な部分や、個人の考えにゆだねられている部分も大きいですし、毎回明確な答えが出るわけではないからです。
例えば、よしが刺身を盗んだことを思い出した時。
あの人が「刺身はお前の好物だからいただきなさい」というコマがあるのですが、これ解釈に悩んであらすじからは省きました。
個人的解釈としては、あの人の皮肉かなと思うんですけどね。
万引きをするぐらい好きなのだから、っていうね。
あの人ならこういって叱るだろう、とよしが考えたと推測します。
でも、あの人の人となりが分からないから何とも言えない部分もあります。
よしを日陰者にしたまま死んでしまったから、いい人には見えないんだけどなー。
ヨシはもうヤケクソになって死にたかったんでしょうかね。
でも思い通りにはならず、反省し生き直すことになった。
佳代たちがいたから、あの人は迎えに来なかったんだろうと思います。
話が前後しますが、多実子は自己肯定感が低く奪われるだけの人生でしたが、佳代と知り合ったことで新しい世界を知ることになります。
あらすじではみどりに嫉妬している部分しか書いていませんが、実はその後みどりとも仲良くなっています。
ここまでひどくなくても、多実子のように他者の評価でしか自分の価値を見出せなくて苦しんでいる人は多いのではないかな、と思います。
現代の問題をかなりしっかりとらえていると、多実子のケースは感じました。
個人的には多実子は結構好きです。素直でかわいいのよ。
みどりは結構えげつないことも平気で言うけど、佳代を理解し佳代の足りない部分を補ってくれる相棒のような存在になっています。
あらすじ読むとなんだこいつは、って思うと思いますが(笑)漫画を読んでいただけるとみどりの良さが理解できると思います。
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前科者 (3)